830、そして自分を自分たらしめるもの

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数が好きと公言しているものの、最近は数に関することを何も発信していないと思ったので、ブログに記事を書くことにした。

だからと言って、なにか美しい数の性質を発見したわけでもない。
むしろこれからある数に対して何か性質を見つけてあげようという心持ちである。

 

「830」を美しくさせるものを探す旅

何かいい数はないかなと考えていたところ今日は8月30日ということで830を例にとってみよう。

これから830の美しい性質を見つけたいと思う。

とりあえず素因数分解してみる。
2×5×83
83が素数であることがわかった。なんら平凡な結果だった。

もう少し頭を柔らかくして考えてみる。

すると830が上下で対称的であることがわかる。

上下が対称的な数字は「0」「1」「3」「8」の4つだ。
(ちなみに左右に対称的な数字は「0」「1」「8」の3つだ。)

上下が対称的な数字のみで構成される4桁の数字は18通りある。悪くない性質だが、そこまで特別感はない。
また、数そのものの性質を追求するのではなく、数の記法に依存した性質もあまり美しくないような気はする。

しかし、僕は小さい頃から慣れ親しんでいるこのアラビア数字が好きだし、そこに美しさを見出すことも、悪くはないだろう。

対称つながりでいうと、点対称な数字(逆立ちしても同じ形に見える数字)は「0」「1」「2」「5」「8」の5つで、「6」と「9」はそれぞれを上下反対から見た数字になる。

だから、16291や9556などは、逆立ちしても同じ数に見える数字である。

話を戻す。僕の思考のままに記事を書いていると、話があちこちに発散する上に最終的な答えはまた別の話題になっているということが起こりうる。

830の性質を見つけたいのであった。
ここはネットの力を借りてみよう。

数の性質を調べようとすると、今のところ、二つの方法がオーソドックスである。
一つはWikipediaである。830年に何かあったのかを調べてみよう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/830年

藤原三守ら格式を撰上する(弘仁格式)

Wikipedia より( https://ja.wikipedia.org/wiki/830年 )

と書いてある。なんのこっちゃわからない。

また、ある程度小さい数なら、数字のwikiが載っており、例えば83なら、
https://ja.wikipedia.org/wiki/83

  • 9番目のソフィー・ジェルマン素数である。1つ前は53、次は89。
  • 7番目の安全素数である。1つ前は59、次は107。
  • ソフィー・ジェルマン素数かつ安全素数である4番目の素数である。1つ前は23、次は179。(オンライン整数列大辞典の数列 A59455)
  • 9番目のスーパー素数である。1つ前は67、次は109。
  • 7番目の 8n + 3 型の素数であり、この類の素数は x2 + 2y2 と表せるが、83 = 92 + 2 × 12 である。1つ前は67、次は107。
  • 3つの連続した素数の和で表すことのできる9番目の数である。1つ前は71、次は97。
    83 = 23 + 29 + 31
  • 3つの連続した素数の和で表すことのできる6番目の素数である。1つ前は71、次は97。
  • 6番目のオイラー素数である。1つ前は71、次は97。
  • 5つの連続した素数の和で表すことのできる5番目の数である。1つ前は67、次は101。
    83 = 11 + 13 + 17 + 19 + 23
  • 5つの連続した素数の和で表すことのできる3番目の素数である。1つ前は67、次は101。
    83 = 32 + 52 + 72
  • 3連続素数の平方和で表すことができる2番目の数である。1つ前は38、次は195。
  • 3連続奇数の平方和で表すことができる数である。1つ前は35、次は155。

Wikipedia より( https://ja.wikipedia.org/wiki/83 )

凄く沢山の情報が出てきて胸が踊る。
830はまだWikipediaには載っていない。

ここはもう一つの手段を使ってみよう。OEIS(The On-Line Encyclopedia of Integer Sequences)、整数列のオンライン辞典である。
https://oeis.org/search?q=830&language=english&go=Search
これによって、830の性質を調べたところ、

Sum of totient function: a(n) = Sum_{k=1..n} phi(k)

と出てきた。
ここで出てきた phi(k) というのは、オイラーの totient 関数で、ある数以下の、その数と互いに素な数字の個数を求める関数である。
phi(1) = 1
phi(2) = 1
phi(3) = 2
phi(4) = 2
phi(5) = 4
phi(6) = 2
という感じで定義されている。

phi(1) = 1 から phi(52) = 24 までの和が 830 らしいです!すごい!かっこいい!

さらに、連続する4つの素数が830とも書いています。197 + 199 + 211 + 223 = 830 ですね。

いい感じの情報が集まって来ました。ようやく、僕は830に対して特別な性質を割り当てることができます。もう8月30日も終わりに近づいて来ました。

 

「830」を美しくさせるもの(結論)

オイラーの totient 関数の総和として表される数は、

1, 2, 4, 6, 10, 12, 18, 22, 28, 32, 42, 46, 58, 64, 72, 80, 96, 102, 120, 128, 140, 150, 172, 180, 200, 212, 230, 242, 270, 278, 308, 324, 344, 360, 384, 396, 432, 450, 474, 490, 530, 542, 584, 604, 628, 650, 696, 712, 754, 774, 806, 830, 882, 900, 940,…

こんな感じで続いていきます。

また、連続する4つの素数の和として表される数は、

17, 26, 36, 48, 60, 72, 88, 102, 120, 138, 152, 168, 184, 202, 220, 240, 258, 272, 290, 306, 324, 348, 370, 390, 408, 420, 432, 456, 480, 508, 534, 556, 576, 596, 620, 638, 660, 682, 700, 724, 744, 762, 780, 800, 830, 860, 890, 912, 928, 942, 964, 988, 1012,…

という風に表されます。

この二つの共通部分を取ってみましょう。つまり、オイラーの totient 関数の総和として表される数の中で、連続する4つの素数の和として表される数は、

72, 102, 120, 324, 432, 830

です。

そして、最後に僕が最初に見つけた、上下対称という性質を加えましょう。
すると、830という数が特別な数に大変身するのです。

オイラーの totient 関数の総和として表される数の中で、連続する4つの素数の和として表される数の中で、上下が対称な数の中で、最小の数。

それが、830なのですっっっっっ!!!!!!!!!!

6番目の数とか、52番目の数とか、そういう言葉は使いたくないです。美しさが薄れてしまいますからね。

やっぱり最小の数とかを使いたいですね。
「最小の完全数番目(6番目)の…」みたいな条件付けは汎用性が高いのであまり好ましくありません。
やはり、「最小の」や「最大の」や「唯一の」とかいう条件が美しいと思います。

 

自分を自分たらしめるもの(余談)

数字の世界と、人間の世界は、ある種の対応関係があると思います。

一見何の特性もなさそうな830という数字ですが、いろんな条件をつけることによって、特別な数に変わったことが実感できたと思います。

これは人間の世界でいうと、何の特性もなさそうな人が、ある条件をつけることによって、その人であると特徴付けられることに似ています。
つまり、人間にアイデンティティを付与しているわけです。

これは哲学的な問題提起をしています。実際、現代論理学でも触れたような気がします。
自分という存在を特別視するための条件を考えましょう。

例えばこんなことを思いつくでしょう。
「山田太郎と山田加代子の間に1995年に京都で生まれた人」

実際、こういう条件のもとで人間を特定すると、それは間違いなくあなた一人に定まるでしょう。
ただ、しかしそれは基本的にはなんら特別な条件ではありません。
全ての人は、誰かと誰かの間にいつかのタイミングでどこかで生まれた人だからです。

同様に「今、北緯〇〇度、東経〇〇度のところにいる人」などと言う条件にも基本的には意味がありません。
全ての人は、いくつかの緯度の、いくつかの経度のところにいるからです。

数字でいう美しい性質のように、人間にも特徴的な性質が必要なのです。
次に、
「身長が高く、ペペロンチーノが好きで、プログラミングができる人」
と言う条件を考えます。
この条件に当てはまる人は沢山いそうですね。(「できる」の定義はここでは明らかにはしませんが)

しかし、「数字が好きで、アプリをリリースしたことがあって、ヒッチハイクをしたことがあって、サービス開発をしていて…」ともっと条件を強くしていくと、そこまで多くの人が当てはまるわけではなくなってきます。

人は、生まれた瞬間から明らかに特別なわけではないと思います。
生きていく中で、自分が属する集合を増やしていき、その共通部分としての自分を特別なものにしていくのだと思います。

世界で一番の何かを掴み取るのは難しいですからね。それに、世界で一番というのも時期などを指定しないと複数いる場合があり、一意に定まらないこともあります。

なにが言いたいかというと、数字を、ある条件を満たす集合の共通部分として特徴付けていくように、
自分自身のアイデンティティも、ある条件を満たす集合の共通部分として形成されていくということです。

もし何かの数の性質をこれから見つけようとする人がいるとすれば、そこに現実世界と関連する哲学を感じて欲しいなと思いました。

 

 

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